秦時明月一の三
第三集
衛荘 楚家をここからたどってゆけば まさに奴らが蓋聶の行き先を教えてくれる
赤練 ふふふふ
蓋聶 今は充分に危険だ 敵は蒼狼王
項梁 蒼狼王?その悪名は 夜の刺客団の頭目といわれる?
蓋聶 そう彼だ
(荒野)
范増 彼はかつて韓王に仕えていたと聞いている 韓国が滅びた後 彼の消息は途絶えたが ここで出会うとは
天明 この狼たちを従えている人?
蓋聶 我らの実力では蒼狼王を押さえられない
天明 彼はなんのために今まで手を出さないの?
蓋聶 最もよい時期を待っているんだ
天明 いつが時期なの?
少羽 バカ!彼は闇夜の殺人魔と呼ばれているんだ そう 当然時期は 空が暗くなった後
天明 お前に何がわかる その実ぼくはすでに知っているさ
蓋聶 暗くなる前に もしこの平原を抜け出せるなら 生きるチャンスがある
狼の群れもテリトリーがある 我らは速度を上げて この辺の地区を離れるんだ
馬車の速度は遅い 一部を捨てるんだ
四匹の馬が引く馬車の 食料 水は除いて それから武器 その他の物は投げ捨てる
狼は残忍だけれども ただし火は恐れる 彼らの近づくのを火を使って阻止する
火を持って必死に戦えば生き残れるチャンスがある
(馬車が 狼に追いつかれ囲まれてしまった)
天明 おじさん 安心して ぼくが守るから
少羽 始まったのか
蓋聶 君は強くなりたいと思うか
天明 そう
蓋聶 私に証明してみるんだ 剣を使って
天明 はい 叔父さん
少羽 馬を放せ
A 誰だ?
少羽 敵だ
B あ・・・・
天明 どうして見えないんだ?どこへ行った?
少羽 天明 気をつけろ
范増 少羽 項梁 天明 えっ
蒼狼王 ボスはなにを手にいれろって このガラクタのどこに俺が手を出す価値がある?
天明 ん やーーーーっ
少羽 危険だ
(少羽と蒼狼王が争う)
范増 項梁 少羽!
天明 や・・・
蒼狼王 蓋聶
蓋聶 その人を放せ
蒼狼王 俺にこいつを放せだと なんだお前らしくないな
項梁 蓋さんの傷口がまた開いた もし彼と蒼狼王が争ったら 殺されるぞ
蒼狼王 お前はすでに傷を負っている 自分を守れずに 他人を救うのか?
お前達 誰も明日の太陽を拝めるとは思うなよ
少羽 うっ
蒼狼王 お前から先に始めるか 邪魔をしないでくれよ
俺達の美味しい獲物を ゆっくりとこの貴重な機会を楽しむさ ははははっ
(蓋聶と蒼狼王 刃を構える)
蒼狼王 ふふふふ
蓋聶 ・・・・・
蒼狼王 ふふふふ
(天明が蒼狼王に向かって火を噴く)
蒼狼王 あっ
蓋聶 早く避けろ
蒼狼王 あっ
(蒼狼王、逃げ去ってゆくと同時に蓋聶が倒れる)
天明 えっ
天明 叔父さんどうしたの 叔父さん 目を覚まして 起きて
范増 重傷を負って失血し 多くの体力を失って また新しい傷を負っている
天明 あ
A 見ろ
(高月、登場)
范増 ん
天明 あっ
高月 蓉姉さんは今重病人を診ているの だから私が変わりに迎えに来たわ 皆様どうか怒らないで
范増 これは墨家の友 良かった
高月 私は姓は「高」名は「月」皆は月ちゃんて呼ぶわ
項梁 何年も医庄には行ってないが 蓉お嬢さんにこんな可愛い妹が居たとは
天明 この月ちゃんて誰?で、蓉お嬢さんってまたどんな関係なの?
少羽 どんな関係かって聞きたいのか?
天明 ん
(高月に続いて 皆船に乗る)
少羽 墨家は諸子百家の最も義理堅い門派だ 墨家の先祖と我ら楚家は永年交流がある
反秦国陣営中 墨家と我ら家族はあくまでも反抗している二派だ
鏡湖医庄 これは墨家の秘密の拠点のひとつ
もし墨家の弟子の導きがなければ 一般の人は到底探し出すことはできないさ
今は秦国の捜査はとても厳しい 皆とても気をつけている
そこに居るのは女人には惜しい人だよ
彼女の年は俺よりもいくつか上だが 墨家の最も有名な医者だよ 蓋さんの傷のためにここに来た
彼女の姓は「端木」名前は「蓉」
天明 ん?「酔う」だって? しかも名医 面白い!
項梁 空が明るくなってきた この一夜も終に明けたか
少羽 月お嬢さんは幼いけれども 端木お嬢さんの有能な助手だよ 同じく女の子には惜しいよ
天明 わぁ
少羽 墨家は本当に不思議な門派だ ここでは奇妙なものがあふれている
高月 すぐよ 前方がそう
(鏡湖医庄)
天明 ん?ここに書いてある文字は知らないな
少羽 これは以前の燕国の文字だ 秦国が統一してからは すでに使用禁止になっている
でもここでは 秦国の法律はまったくなんの関わりもない
天明 なんて書いてあるの?
少羽 端木蓉さんが決めた医庄の規則「三不救」さ
天明 三不救?
高月 ふふ 蓉姉さんは医術に通じていている 但しこの三種類の人は 絶対に治療しないわ
第一 秦国の人は救わない 第二「蓋」という名の人は救わない
第三は 剣で争って傷を受けた人は救わない
天明 おかしな規則だな
少羽 いずれにせよお前にはなんの関係もないが 覚えておくんだな
高月 蓉ねえさん
端木蓉 月ちゃん 道中順調だった
高月 順調よ 姉さんは二日二晩寝ていないわ 少し休んで
少羽 范増 蓉お嬢さん
端木蓉 お久しぶり
天明 ん
端木蓉 この子は誰?
項梁 彼は天明 少羽の友達さ
端木蓉 そう
天明 この人が月ちゃんのお姉さんか 月ちゃんうれしそうだ この人はどうして仏頂面?穴の開いた銭のようだ
范じぃさんの顔も頑固面だけれど この范じぃさんがすごいってこと誰もしらないだろ
端木蓉 このケガ人はどうしたの?
少羽 私達の村が秦国の奇襲攻撃を受けたとき 強敵を撃退し幸いにも助けられました
その時受けた重傷です だから蓉お嬢さん助けてください
端木蓉 ここでは「三不救」梁さん知っているでしょ
項梁 知っている
端木蓉 例外があったことがありますか?
項梁 ん これは・・・
端木蓉 この人は剣を使うの?
項梁 その・・・・
少羽 蓉お嬢さん彼が剣を使うと何故断定するのですか
端木蓉 この人の手及び腕の筋肉 骨格 いずれも永年修練した者の特徴があります
剣を使うばかりでなく かなりの腕利き
少羽 この人は楚家を救うために重傷を負ったんです
端木蓉 ふん 嘘を言う あなた達他の人には青あざがあるけれど 剣の傷はない
見るところ 楚家を襲撃した敵は鈍器を使い 鋭利な武器は使っていない
この人の身には青あざはない 二三十箇所利器に依る傷があるわ
もしあなた達を救うため受けた傷ならば 私は治療します
残念だけれど 彼の身の上の傷はそれ以前に受けたもの
少羽 あっ
端木蓉 連れ帰って
少羽 待って 墨家の鉅子は兼愛天下を提唱しています 六国の豪傑で尊敬しないものはいない
蓉お嬢さんは墨家の弟子 もしや見殺しに?
端木蓉 月ちゃん 皆様をお送りして
高月 うん
少羽 蓉お嬢さん なんとしても盖さんをお助けください
彼は確かに剣を使います 剣を競うためではありません 秦軍に対してのものです
天明 医者が人を救うのは当たり前 あくまでもこのおかしな規則にこだわるのか
これは救わない あれも救わない あんたの「三不救」は改正すべきだ
生きている人は救わないってね 簡単だろ!
端木蓉 私にはその他の病人がいます あなた達出て行ってください
天明 世の中にこんなおかしな女の人が居るとは ぼくは お前の看板を壊すぞ
端木蓉 ふん
(天明が看板に向かってゆこうとしたとき 班大師登場)
班大師 墨家の勢力範囲で殺人と放火はできない
項梁 誰だ?
端木蓉 墨門での乱暴とは 大胆なこと
高月 班じいさん あなたなの
天明 ううううっ
項梁 班大師 この児は楚家の友達です 少年の無知 彼を怒らないでください お許しください
どうぞ彼を放してやってください
班大師 わしゃ楚家がこんなような無鉄砲とは思わなかった そそっかしい奴は返す 本当に危険だな
天明 じぃさんなんだって?
少羽 天明
班大師 蓉お嬢さんはすでに立ち去るように告げた あんた達はまだ無理を言うのか?行きなさい
もしやわしがこんなじじぃだからって出てゆかないのか?
項梁 失礼しました 私達はこれで 少羽 行こう
少羽 行くぞ 天明 心配するな 世の中には蓋さんのケガを治してくれる医者は他にもいるさ
(蓋聶をつれて引き返そうとした時に淵虹剣が地面に落ちる それを見て)
端木蓉 待って
高月 ん 蓉姉さんどうしたの?
端木蓉 怪我人とこの児を残して その他の外は出て行って
天明 ん
少羽 どういうこと
班大師 蓉お嬢さんはその人を置いてゆけって言ってるんだ なにをぼんやりとしている
もしやわしにつまみ出されたいのか?
(班大師が朱雀を放つ)
天明 ん?
班大師 墨家の主人に手紙を送ったから 届いたら いつものところで会えるだろう
少羽 よし 我らは又出発するぞ みんな 後で会おう
(石が飛んでくる)
天明 痛い
少羽 アニキが行くんだ 挨拶しないのか
天明 挨拶
少羽 はっ
(石がまた飛んでくる)
天明 はははっ
高月 ふふふ
班大師 ん なんだ?小僧
天明 じいさん その木の鳥はまだあるの?
班大師 じぃさんだと わしの鳥とお前になんの関係がある?
天明 遊びたいんだ
班大師 ダメ
天明 ん 木の鳥をぼくにくれよ
班大師 小僧 放せ
天明 答えてよ お願いだから
班大師 わしはお前のようなとぼけた奴に出会ったことがない 貸したとしたら わしの長年の苦労が水の泡だ
天明 え ごめん
(朱雀が建物の窓に当たった)
端木蓉 私と月ちゃんとでおじさんの傷を見ています 重傷なのよ
もし邪魔をするような音を立てたら 彼がどうなるかわかるわね ちゃんと聞いている?
天明 ん んん!
(回想)
燕大子妃 お願いです 私達を置いてゆかないで 出てゆくたびに 眠れないんです
たとえ眠れても悪夢に目がさめます 娘はいつもパパと言って泣いているんです お願い
太子丹 本当にうるさい女だ
燕太子妃 あなたのお父様のせいでは・・・
火事にあってからの天明の記憶の多くは 困窮して流浪の身の日々だった
住むところは無い 家族は居ない 友も居ない 毎日目覚めると一番に 自分が何処に居るのか確認した
医庄での時間はとても短いものではある けれどもここではまだ味わったことの無い安らぎと楽しさを感じた
彼は何も考えないでいたが こんな日々は 何時まで続くのか?
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